三月はいなくなる子が多いから
「もし私が園田さんと友達になれたら、
ひとつ私の願いを聞いてくれるって」

昨日の放課後。
卒倒した私を介抱しながら、牧田先生は約束をしてくれた。

大きな目をさらに見開いて、
園田さんは私の言葉が不意打ちだったようだ。

園田さんは立ち止まり、めっちゃ笑っていた。
私はなんで笑われているのかわからなかった。

下校中の生徒は
由来のわからない奇祭に出会したように
自身の確実な安全を確保した距離から
好奇心でギラギラと瞳孔を開き、
私たちの様子を見ていた。

しばらく大声で笑っていた園田さんは
目尻に浮かんだ涙を手で拭った。
いまだ笑いのツボの刺激は残っているようだが、
楽しそうに彼女は言った。

「…ごめんな。いや、マジで。
久しぶりにこんな笑ったのが、平野さんのおかげとはねえ。
お前さ、本当に自分のことしか考えてねえのな!
皮肉に聞こえるかもしんないけど、マジで驚いてんだよ。
自分の恋愛の成就のためには、あたしの都合なんてお構いなしだもんな。
いやあ、すげえよ」

そう言って、また笑いがこみ上げてきたようだ。
へっ、へっ、と笑いを抑えようとしているが、
うまくいかないようだった。

園田さんの説明の中にどこにも面白い部分がない。
とにかく、私が自分勝手に、園田さんに迷惑をかけているのは
充分にわかった。。。


「よし、こうしよう」

園田さんはまた涙を目の端に溜めていた。
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