三月はいなくなる子が多いから
園田さんは大男の下卑た視線から目を逸さなかった。

園田さんと大男の間に、少しだけ緊張が走った。

「ニイさん、園田って子はもうとっくに帰っちゃってるよ。
悪いんだけど人違いだわ」

そう言って、園田さんはにこっと笑った。

大男も、その仲間の不良たちも、さらには私までも気の抜けてしまう、
毒っ気のない、自然な笑顔だった。

大男は園田さんの言葉と穏やかな笑顔に、
言葉につまってしまっていたようだったが、
再び、その表情に獣性を宿らせた。

「…はっ。身長が高くて、ヤベー美人で、真っ青な目をしている女が
そんないるはずねえだろうが」

そう言うと、
園田さんを囲んでいる不良たちもまた
気持ちの悪い表情を戻した。


校門を出たすぐのところで
私と園田さんはこの不良たちに囲まれていた。

下校しようとしている誠華学園の生徒たちは私たちの方を
見ようとはせず、我関せずと足早に駅へと向かっている。

誰か先生を呼んでよ!
そう叫びたかったけれど、不良に絡まれたことのない私は
怖くて何もできなかった。言えなかった。

「お前、こいつが園田マリエルだろ?」

私のことなんか眼中になかったはずの大男がそう言った。
なんで、しかも今日の、今の、このタイミングで、、、


そんなヒドい……
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