三月はいなくなる子が多いから
不良たちにとって園田さんの提案は想定外であったのだろう。
彼らは動揺したようだった。
捻り出したような大男のセリフはと言えば、

「倍を出すって言うのか。となると100だ。学生が簡単に出せる金額じゃねえぞ」

フッカケでもなんでも、園田さんのディールに応えてしまった不良たちは、小物だった。園田さんと比べて。
私にわかるはずもないけれど。

「100!!!」

大袈裟で、コミカルに園田さんは言った。
小演劇の舞台を見ているようだ。

「ってことは、あたしなんかに50も出したやつがいんのかあ。
はー、となると、お前ら岩崎の坊っちゃんに頼まれただろ?」

そういって園田さんは、にやっと笑った。
不良たちが否定しようとも、園田さんがそう言うのだからそれが正解であるのだろう。

岩崎の坊っちゃん。

岩崎先輩のこと!?

岩崎先輩は誠華学園の高等部三年生で、多くの女の子から憧れられているヒトだ。
先日岩崎先輩が園田さんにフラれた、なんて噂話を聞いたばかりだ。

俺様っぽい岩崎先輩だけれどもフラれたからって、
お金をつかって好きな女の子を不良にXXXさせようとするんだろうか…。


園田さんは、不良のリーダーである大男に少しずつ歩み寄りながら言った。

「岩崎の坊っちゃんなんかに付き合うのはやめとけって。
あいつの親族がどんだけ力持ってるかわかってねえだろ?
私やお前らの50と岩崎の坊っちゃんの50の価値は違うんだ。
アブねえぞ。
手を引けよ。
あたしをお前らでXXしたところで、
それがお前らの人生でどれだけ幸福をもたらすんだ?」

園田さんは大男の目の前まで詰めていた。
すこしつま先立ちをすればキスしてしまうくらいの距離に。


どうして。。
園田さんはどうしてそんなことができるだろう。
私は立っているのが精一杯だった。
何も考えられず、この空き地に来てしまったことを心から後悔をしている。


校門からこの空き地へ向かう道中。
細い路地を曲がるたびに、目だけしか見えないニット帽(あとで目出し帽っていうことを知ったけれど)をした男たちが増えていった。

校門では7、8人くらいだった不良たちは、
この空き地につく間には30人くらいに増えていた。
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