三月はいなくなる子が多いから
「おニイさん、だいぶ女を殴り慣れてんね。
身体デカイだけの脳筋だと思ったら、
いい具体に手ぇ抜きやがった」
そう言って、
園田さんは口唇に滲む血を拭った。
「おーい、
こいつら誰だか知ってるやつ、いるー?」
こんな大男に殴られたばかりだと言うのに、
園田さんの口調はのんびりとしたものだった。
そしてその問いかけは、
私にも、もちろん不良たちに対してでもなかった。
大男も仲間の不良たちにも訝しげに園田さんを睨んだ。
「さっき姉ちゃんを殴った子は、
時々うちに買い物くる子ダネ。
岸本クン……」
大男と校門で園田さんを囲んでいた不良たちは
驚いたように後ろを向いた。
園田さんの動向に注意が向き過ぎていたのだろう。
不良たちは、目出し帽の集団に囲まれているのに
気づいてなかったようだ。
「ただ岸本ってのは偽名ダヨ。
本名は岸田本之丞って立派な名前を持ったいいトコロの坊っちゃんデネ、
ほんとなら姉ちゃんのふたつ上の誠華学園のパイセンだったヒトなんデスよ」
先ほどの目出し帽の男は続けた。
「中等部の一年の時に、他の学校の中三の女の子ダッタかな、
軟禁して散々オモチャにして自殺させちゃったみたい。
本之丞クンの家もいいトコロとはいえ、
コトがコトだからネ。
その時に岩崎サンとこの長男にだいぶ助けられた。
それ以来、本之丞クンは岩崎サンの忠実な犬になった。
そうだヨネ? 本之丞クン」
岸田という大男の顔には怯えが浮かんでいた。
狩る側から狩られる側になったことを
悟ったのだろう。
身体デカイだけの脳筋だと思ったら、
いい具体に手ぇ抜きやがった」
そう言って、
園田さんは口唇に滲む血を拭った。
「おーい、
こいつら誰だか知ってるやつ、いるー?」
こんな大男に殴られたばかりだと言うのに、
園田さんの口調はのんびりとしたものだった。
そしてその問いかけは、
私にも、もちろん不良たちに対してでもなかった。
大男も仲間の不良たちにも訝しげに園田さんを睨んだ。
「さっき姉ちゃんを殴った子は、
時々うちに買い物くる子ダネ。
岸本クン……」
大男と校門で園田さんを囲んでいた不良たちは
驚いたように後ろを向いた。
園田さんの動向に注意が向き過ぎていたのだろう。
不良たちは、目出し帽の集団に囲まれているのに
気づいてなかったようだ。
「ただ岸本ってのは偽名ダヨ。
本名は岸田本之丞って立派な名前を持ったいいトコロの坊っちゃんデネ、
ほんとなら姉ちゃんのふたつ上の誠華学園のパイセンだったヒトなんデスよ」
先ほどの目出し帽の男は続けた。
「中等部の一年の時に、他の学校の中三の女の子ダッタかな、
軟禁して散々オモチャにして自殺させちゃったみたい。
本之丞クンの家もいいトコロとはいえ、
コトがコトだからネ。
その時に岩崎サンとこの長男にだいぶ助けられた。
それ以来、本之丞クンは岩崎サンの忠実な犬になった。
そうだヨネ? 本之丞クン」
岸田という大男の顔には怯えが浮かんでいた。
狩る側から狩られる側になったことを
悟ったのだろう。