Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?



「亜子ちゃん。僕の自惚れでなければ、さっき”愛して欲しかった”って言ってた?」

「・・・」

「そっか。そうなんだ」

 返事はしなかったのに、私の表情を見て匠くんは嬉しそうにはにかんだ。きっと私の心は、匠くんの前じゃ丸裸も同然。

「自惚れていてもいい? 訂正するなら今だよ? これから先、絶対に手放してあげないよ?」

「・・・」

「僕、心配だったんだ。亜子ちゃんは何にも執着しないって言っていたから。僕だって直ぐに捨てられちゃうんだって思ってた。なのに亜子ちゃんは掛けられた手錠がどこにも繋がれていないことにも気づかずに、僕の傍にいてくれた」

「逃げる理由がないもの」

「今回は僕のことを思って離れたんでしょう?」

「違う、自分が可哀想になっただけ」

「ふふ。そっか。じゃあ、そういうことにしておく」

 匠くんは満足そうに笑ってから、私の首元に手を回してからコロンと横に転がった。私は流れるようなエスコートのお陰で、匠くんに腕枕されながらトクトクと鳴る彼の心臓に耳を押し当てている。心音を聞いているだけで、安心と幸福に眠気が襲ってくる。この幸せな時をもっと堪能していたいのに、瞼はずしりと重く閉じられていく。


「亜子ちゃん。好きだ。LIKEじゃなくてLOVE。僕の好きの意味、ちゃんと理解してね。僕は亜子ちゃんが思っているほどいい子じゃないよ。覚悟してね」



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