永遠の愛を君に…
 桃香さんに一目惚れした俺は、早速アプローチを開始した。

「桃香さん、今夜、飲みに行きましょうよ」

桃香さんが翌日オフの日を狙って誘ってみる。

「何言ってるの。須原くんのシフト、
24時まででしょ?
真っ直ぐ帰って寝なさい」

笑顔で軽くいなされて終わった。

それでも、俺は、何度も何度も誘い続けて、何度も何度もさらりと断られ続けた。

 俺は身長も182㎝と高く、若い頃にモデルをしていたという母によく似ているせいか、自分で言うのは憚られるが、一般的には割とモテる方だと思う。
なのに、残念ながら桃香さんにはそのルックスは全く効果を発揮しなかった。

 そんな俺たちの関係が変わったのは、年末の大雪が降った日のこと。
帰れなくなった桃香さんを俺は部屋に誘った。
公共交通機関は全く動かず、タクシーも捕まらない状況。
にも拘らず渋る桃香さんに、俺は言った。

「じゃあ、俺が宗弥んちに泊まるから、
桃香さんはうちに泊まって」

桃香さんとどうこうという下心より、この大雪の中、桃香さんを歩かせないためにどうすればいいかが、俺の心の大半を占めていた。
宗弥んちは、ここから徒歩10分くらい。
雪は降ってるけど、歩けないわけじゃない。

「それは悪いよ」

と言った後、桃香さんは俺の目をじっと見つめた。

何?
そんな風に見られるとドキドキする。

「須原くん、信じていいんだよね?」

桃香さんは不安に揺れる瞳で確認してくる。

「もちろんです。
俺、桃香さんのこと好きですから、
桃香さんに嫌われるようなことは絶対に
しません」

「 バカ 」

桃香さんは頬をほんのりピンクに染めて、照れたように言った。

 その日、俺は桃香さんを部屋に連れて帰ったが、俺はソファで眠り、桃香さんには指一本触れることなく、一夜を過ごした。

 その日を境に、桃香さんは安心したのか、家飲みに誘っても断ることなく来てくれるようになった。
あの日勝ち得た信頼は大きかったんだと思う。

そうして桜の開花宣言がニュースになっていたその日、俺は桃香さんとソファに並んでワインを飲みながら、もう何度目か分からない告白をした。

「桃香さん、俺は、初めて会った時から
桃香さんのことが好きです。
俺、年下で頼りなく見えるかもしれない
けど、ちゃんと一人前になって桃香さんを
支えられる男になるから。
だから、俺と付き合ってください」
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