副社長の初めての相手は誰?
「あ! 大変! 」
絢は倒れ込んだ男の子に駆け寄った。
優輝も絢に着いて行った。
「大丈夫? 」
男の子は両手をついて立ちあがった。
「…大丈夫…ゴホッ…」
答える声も弱くて、呼吸も荒い男の子。
絢は男の子の顔を覗き込んだ。
「…忍君…でしょう? 」
名前を呼ばれて、男の子はハッとして絢を見た。
熱で目がトロンとしている男の子。
「忍君。…やっと、会えたね」
絢にそう言われると、男の子は何かを思い出したように目を見開いた。
「絢、どうしたの? 知っている子? 」
優輝が声をかけると、男の子はじっと優輝を見た。
じっと見つめられ、優輝は驚いた。
「…きほ? …」
小さな声で優輝が言った。
「僕は…忍です…。秋田忍…」
そう答えると、また倒れそうになる男の子を優輝が抱きとめた。
「酷い熱だ。家はどこ? 送って行くから」
答えたくても、呼吸が苦しくて答えることが出来ない男の子。
「とりあえず車に行こう」
優輝は男の子を抱きかかえ、絢と一緒に車に戻って行った。