副社長の初めての相手は誰?

「お父さん、お水持ってきたよ」


 絢がペットボトルのお水を持ってきた。


「忍君、ちょっと起きれるかい? 」


 
 両肘をついて、忍は半身を起こした。


 優輝が忍を支えてお水を飲ませてくれる。


 水を飲むと、忍はちょっと落ち着いたようだ。


「…すみません…」

 小さな弱い声でお礼を言う忍。

 だが…ギュッと優輝にしがみ付いてきた。

 そんな忍を感じると、優輝は胸がキュンとなった。

「もう大丈夫だから、ゆっくり寝ていいよ。傍にいるから」


 しがみついてきた忍の頭を、優輝はそっとなでた。

 
 優輝に頭を撫でられると、忍はそのまま眠ってしまった。


「…可愛い…」

 忍の寝顔を見ながら、優輝はそっとベッドに寝かせた。 

 

 


 

 カチャッ。

 玄関の開く音がした。


「あ、お母さんだ」


 絢は玄関に向かった。




 希歩が玄関に入って来ると、嬉しそうに絢がやって来た。

「おかえりなさい…」


 痛々しい絢を見て、希歩は驚いた目をした。


「初めまして、お母さん。絢です」

 絢は希歩に満面の笑みを向けた。


「絢…」

 
 驚いた目をした希歩が涙ぐんできた。


「お母さん、ずっと探してくれて有難う。やっと会えたね」

「…どうしたの? 怪我して…」


「あ、これね。ちょっと転んでしまったの、大丈夫だよ気にしなくて」


 転んだ傷じゃない事は希歩には分かった。
 
 でも、穏やかな笑顔を向けてくれる絢を見ると胸が痛くなった。




「すみません、お邪魔しています」


 奥から優輝がやって来た。


 優輝を見ると、希歩はちょっと視線を反らした。


 そんな希歩を見て、絢は何かを感じたようだ。
< 22 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop