副社長の初めての相手は誰?
「お父さん、お水持ってきたよ」
絢がペットボトルのお水を持ってきた。
「忍君、ちょっと起きれるかい? 」
両肘をついて、忍は半身を起こした。
優輝が忍を支えてお水を飲ませてくれる。
水を飲むと、忍はちょっと落ち着いたようだ。
「…すみません…」
小さな弱い声でお礼を言う忍。
だが…ギュッと優輝にしがみ付いてきた。
そんな忍を感じると、優輝は胸がキュンとなった。
「もう大丈夫だから、ゆっくり寝ていいよ。傍にいるから」
しがみついてきた忍の頭を、優輝はそっとなでた。
優輝に頭を撫でられると、忍はそのまま眠ってしまった。
「…可愛い…」
忍の寝顔を見ながら、優輝はそっとベッドに寝かせた。
カチャッ。
玄関の開く音がした。
「あ、お母さんだ」
絢は玄関に向かった。
希歩が玄関に入って来ると、嬉しそうに絢がやって来た。
「おかえりなさい…」
痛々しい絢を見て、希歩は驚いた目をした。
「初めまして、お母さん。絢です」
絢は希歩に満面の笑みを向けた。
「絢…」
驚いた目をした希歩が涙ぐんできた。
「お母さん、ずっと探してくれて有難う。やっと会えたね」
「…どうしたの? 怪我して…」
「あ、これね。ちょっと転んでしまったの、大丈夫だよ気にしなくて」
転んだ傷じゃない事は希歩には分かった。
でも、穏やかな笑顔を向けてくれる絢を見ると胸が痛くなった。
「すみません、お邪魔しています」
奥から優輝がやって来た。
優輝を見ると、希歩はちょっと視線を反らした。
そんな希歩を見て、絢は何かを感じたようだ。