副社長の初めての相手は誰?


「絢を病院へ連れて行った帰りに、忍君に会ったんです。熱でふらふらで、倒れそうだったので送ってきました。今はぐっすり寝ていますよ」


「…ご迷惑をおかけしました。…有難うございます」


「いいえ、絢も忍君を知っていたようですから」

「え? 」

 希歩が驚いて見ると、絢は強く頷いた。


「それより…」


 なに? …

 希歩はちょっと肩を竦めた。


「…お腹空きませんか? 」

「え? …」


 驚いて、希歩は思わず優輝を見た。

 目と目が合うと、優輝は優しく微笑んでくれた。

 だが希歩は、すぐにまた視線を反らした。



「お昼ですから。お腹すいていませんか? 」


 言われてみると…

 グーッと希歩のお腹が鳴った。


「あ、お母さんお腹鳴っちゃったね。私もお腹空いてたの」

「…すみません。…大した物はありませんけど、お昼作りますので。良かったら、食べて下さい。忍を助けて頂いたお礼です」

「え? 本当? 」

 絢が嬉しそうに目を見開いた。


「はい…」


 希歩はそのままリビングへ向かった。


「お父さん、よかったね。久しぶりじゃない? 誰かの手料理食べるの」

「あ、そうだっけ? 」

「だって、家ではあの人気にして。ゆっくり料理なんて、作れなかったから。いつも、お惣菜ばかりじゃない」

「そうだね」

「お母さん、優しいから料理も上手だと思うよ」



 とても嬉しそうな絢。


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