副社長の初めての相手は誰?
3 近づいてくる距離と離れたい距離
暫くして。
お昼に希歩が作ってくれたのは、焼き魚だった。
鮭を焼いて、美味しそうな卵焼きに、じゃがいもとニンジンを煮たもの。
そしてお味噌汁と温かいご飯。
「すみません、買い置きの物ばかりですが。どうぞ、召し上がって下さい」
食卓に並んだ和食を見て、絢も優輝もとても喜んだ目をした。
「ありがとうございます。頂きます」
「頂きます」
優輝と絢が食べ始めて、希歩も一緒に食べ始めた。
優輝は絢の魚を、ほぐしてあげている。
片目が見ずらい絢に、とりやすいように配慮してくれている。
そんな姿を見ると、希歩はちょっと嬉しさを感じた。
「こんな美味しいお魚、初めて食べたわ。有難う、お母さん」
「い、いえ…」
「和食上手なんだね。いいなぁ、忍君が羨ましい」
絢も優輝もとても喜んでいる。
希歩は黙ってご飯を食べていた。
そんな希歩を、優輝は食べながら見ていた。
お昼を食べ終わると、絢はとてもご機嫌になった。
「あの、洗い物。僕がやりますよ」
優輝が食べを終わった食器をシンクに運んでくれる。
「あ、いいえ。私がやりますから」
と、希歩が食器洗いのスポンジを手にしようとした時、優輝も同時に手を伸ばして…。
2人の手が重なった。