副社長の初めての相手は誰?
手が重なって、希歩はすぐに離そうとしたが。
何故か優輝がギュッと握ってきて…。
どうしたらいいのか、希歩は分からなくなってしまった。
握られた手からとても暖かいエネルギーが伝わってきて…。
そのエネルギーを感じると、希歩は何故か胸がキュンと鳴って何かが込みあがってくるのを感じた。
「…いつも、1人で頑張っているんじゃないですか。誰かが居る時くらい、頼ってもいいんですよ」
優輝の言葉がとても優しくて…。
希歩の目がちょっと潤んできた。
潤んだ目を見られたくなく、希歩はそっと顔背けた。
「ここは僕がやりますから。忍君を、見てきてあげて下さい」
「…すみません…」
なんとなく、手を離すことが名残惜しかったが、希歩はそのまま忍の様子を見に行った。
優輝は食べ終わった食器を洗ってくれて、絢は優輝を手伝ってくれた。
忍はぐっすり眠っている。
ちょっとだけ顔色が良くなっていた。
「本当に、ご迷惑をかけして申し訳ございませんでした。朝は、熱もそれほどなく。風邪っぽいから、病院行ってくるって言っていたのですが。熱が上がってしまったのですね」
「夏風邪は気を付けて下さい。この暑さで、熱を出すのはきついですから」
「はい…」
絢が希歩の傍に歩み寄ってきた。
「ねぇお母さん。私、今日からここに居てもいい? 」
「え? 」
「本当は、伯母さんの家に行こうと思っていたの。でも、お母さんの傍にいたいから。だめ? 」
「でも…まだ、手続きもしていないし。昼間は、誰もいないから…」
「忍君がいるじゃない。それに、忍君を1人にしてたら、また今日みたいになっちゃうよ」
「そうだけど…」
困った顔をしている希歩。