副社長の初めての相手は誰?


 その後、優輝は仕事に戻る為帰って行った。


 絢は大人しくテレビを見ている。


 希歩は複雑な気持ちだった。

 娘を返してくださいと、優に言ったが。

 こんなにも簡単に帰って来るとは予想外だった。


 忍が一人で病院に行った事も驚くばかりで。

 そこで偶然にも絢と優輝に会ってしまうとは…。



 絢は初めて会う希歩に「お母さん」と笑顔で言った。


 初めて会う絢に、希歩は胸がキュンとなった。

 娘が戻って来て嬉しい気持ちと、初めて見た娘が… …優輝にそっくりだったことが、希歩の気持ちを大きく揺さぶったのだ。



 傷だらけの絢を見ると、希歩にも痛みが伝わってくる。

 でもどうして、絢は忍を知っていたのだろうか?

 会ったことなど一度もないのに…。


 少しの疑問を抱いたが、とても純粋な絢を見ていると愛しくてたまらなくなる希歩。

 




 夕方になると。


 忍の熱がだいぶん下がって来た。

 食欲も出て来た忍は、リビングに出てきて食卓でおかゆを食べれるようになった。


「忍君、よかったね食べれるようになって」

 傍に座って絢が言った。

「…助けてくれて、有難う…」

「ううん。やっと会えたね」

「…うん。…」

 
 絢は忍の顔を覗き込んだ。


「ねぇ忍君。なんで、一日早かったの? 」

「あ…」


 忍はちょっと恥ずかしそうに視線を落とした。


「もしかして、お父さんに甘えたかったの? 」

「ち、違うよ…」


 ちょと図星を指されたのか、忍は赤くなった。

「別にいいよ。私もお母さんに、早く会いたかったもん」

「…ごめん…」


「謝ることないよ。忍君は、お父さんが大好きだもんね。ずっと、待ってたもんね」

「…でも、僕は…お母さんを、守りたかったから…」

「うん。ありがとうね、お母さんの事護ってくれて。これからは、一緒だからね」

「…うん…」


 忍はゆっくりとお粥をまた食べ始めた。

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