副社長の初めての相手は誰?


 希歩が洗濯を終えてリビングに戻ってきた。


「ごめんね、お腹空いたでしょう? 夕飯作るから、待っててね」


 冷蔵庫から食材を取り出して、夕食を作り始める希歩。


 絢は忍の頭にそっと手を当てた。

「これで、ちょと楽になるよ」

 
 絢の当ててくれた手から、とても穏やかなエネルギーが忍に伝わってくる…。


「有難う…」

 素直にお礼を言う忍は、とても穏やかな表情をしている。

 顔色もだんだん良くなり、虚ろだった目がしっかりしてきた。





「ごめんね、遅くなって」


 希歩が出来上がった夕飯を持ってきた。


「今夜はオムライスなの。ケチャップじゃなくて、デミグラスソースなんだけど。絢ちゃん食べれる? 」

「うん、大丈夫だよ。初めてだけど、私は好き嫌いはあんまりないから」

「そう、良かった」



 目の前に置かれた白いお皿の上に、ふんわり卵に包まれたオムライスにデミグラスソースがかかっていて湯気が立っている。


 絢はとても嬉しそうな顔をした。


「いただきます」


 手を合わせて、スプーンで食べ始める絢。


「美味しい。とっても、あつあつなんだね。温かいオムライス、初めて食べたの」

「そうなの? 」

「うん、私…。いつも、冷めたご飯しか食べれなかったから…」


 ちょっと悲しそうな目をした絢。


 オムライスを食べながら、絢はとても嬉しそう。

 そんな絢を見ていると、希歩も嬉しくなった。


「お母さん…僕も、食べたい…」

「え? 忍も食べるの? 」

「うん、なんか絢ちゃんが食べているの見たら食べたくなった」

「そう、じゃあちょっと小さめで作るから待ってて」



 希歩があオムライスを作り始めると、忍は嬉しそうに笑った。
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