副社長の初めての相手は誰?
「あ、忍君。やっと笑ってくれたね」
「あ…」
ちょっと恥ずかしそうに、忍は視線を落とした。
「忍君って、お父さんと似ているね」
「え? …」
「お父さんね、何か心に閉まっていると。笑わなくなるの。ずっとね、笑わないお父さんを見ていたの」
「…そうなんだ…」
「でも今日は、お父さんはとっても穏やかな顔していたよ。忍君を見ているときなんて、すごく優しかったし。笑ったお父さん、初めて見た気がしたの」
「…ふーん…」
「はい、できたわよ」
絢のよりちょっと小さめのオムライスを作ってくれた希歩。
忍はちょっと不愛想な顔をして食べ始めた。
ゆっくり食べ始める忍。
食べながらもムスッとしている忍を見て、希歩はちょと心配そうな顔をしていた。
ご飯を食べて、お風呂に入って。
絢は今夜は希歩くと寝たいと言い出した。
忍は
「僕は自分の部屋で寝るから」
と、ちょっと冷めた口調で言って部屋に戻って行った。
そんな忍を絢はちょっと気にしていた。
希歩の部屋はシンプルで、机と椅子と本棚が置いてある。
服はクローゼットに閉まってあり、小さなタンスだけ置いてある。
ベッドを置いてあっても広々としている部屋。
「ごめんね、ベットシングルだからちょっと狭いかもしれないけど」
「ううん、大丈夫だよ」
希歩の横に寝て、絢はとても嬉しそうに笑った。
電気を消すと、絢はギュッと希歩に抱き着いてきた。
「お母さん…会えるのずっと待ってたよ…。誰かと一緒に寝るの…初めて…」
スーッと絢は眠りに入ってしまった。
絢の寝顔を見て、希歩は愛しそうな目をした。
「…あの人と、そっくり寝顔なんだね…」
ギュッと絢を抱きしめて、希歩も眠りについた。