副社長の初めての相手は誰?

 翌日。

 宗田ホールディング。


 いつものように優輝が出勤してくると、1人の男性社員が優輝に歩み寄ってきた。


「副社長、ちょっといいですか? 」

「どうしたんだい? 」


「あの…この前の女子社員のお弁当の事なんですが。…僕、見ちゃったんです。副社長の奥さんが、あの女子社員のお弁当を触っていたところを」

「え? 」


「ものすごく怖い顔していましたよ。なんだか怖くて、判らないように逃げましたけど」

「そうなんだ。…それは、間違いないんだね? 」


「はい。…あ…」


 と、男性社員が驚いた顔をした。


 すると…


「優輝さん」


 ネコナデ声で春美が現れた。


 今日は胸元が多き開いている、ノースリーブのロングワンピースを着ている春美。

 相変わらず杖をついて歩いている。



 男性社員は春美を見ると真っ青になった。


「ん? 」

 春美は男子社員を見た。

 まるで獲物を見つけた獣のような目をしている春美。



 男性社員は目を反らして、逃げるようにその場を去って行った。


 去ってゆく男性社員を見て、春美はニヤッと笑った。



 優輝は春美に振り向いた。


「優輝さん、今日はお昼一緒に食べれるでしょう? 」


 笑いかけてくる春美に、優輝は無表情で見つめている。


「優輝さん、お昼がだめなら夜でもいいのよ。絢もいなくなってくれたから、2人でゆっくり過ごせるもの」


 絢が居なくなったと言って喜んでいる春美に、優輝は返す言葉が見つからなかった。



「おはようございます、副社長」


 出勤してきた女子社員が挨拶をした。


「おはよう」

 笑顔で挨拶を返す優輝。


 そんな優輝を見て、春美は女子社員を睨んだ。


「チッ…」

 舌打ちをして睨んでいる春美。


 優輝はそのままエレベーターに向かった。



 春美は女子社員を睨みつけたまま、どこの階へ上がって行くのか見ていた。

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