副社長の初めての相手は誰?
声をかけられ、男性は振り向いた。
目と目が合うと、優輝は男性にそっと微笑んだ。
「もしかして…忍君の…おじい様ですか? 」
ん? と、男性は優輝を見た。
「そうなんですね? 」
男性は驚いた目をしてキョンとなった。
「忍君に似ているので…。すみません、初めまして。僕は、宗田優輝と申します」
「あ…君が…」
「僕をご存知なんですね? 」
「…私は秋田海斗(あきた。かいと)です。お察しの通り、秋田忍の祖父です。そして…希歩の父親です」
「あなたが…」
海斗は優輝に歩み寄って、名刺を渡した。
名刺を受け取ると、国際弁護士 秋田海斗と書いていある。
事務所は金奈市とアメリカにあるようだ。
「良く判りましたね、私が忍の祖父だと」
「はい、忍君と目がそっくりだったので。それに、俯いている表情も似ていました」
「ほう、そんなところまで覚えているのかい? 」
「はい…」
じっと海斗を見つめる優輝。
海斗はちょっと怪訝そうな目をしていたが、優輝に見つめらると表情が和らいだ。
「…きっと、沢山謝らなくてはならない事があります。…なので、時間を頂けませんか? 僕も、ちゃんとお話ししたい事があります」
「いいだろう。いつでも、その名刺に書いていある電話番号に連絡くれれば、応対するよ」
「わかりました。また連絡させて下さい」
そっと一礼して、優輝は去って行った。
「…やっぱり憎めないな…」
去りゆく優輝を見て、海斗が呟いた。