副社長の初めての相手は誰?
しばらくして。
優は希歩との約束の為外出した。
指定されたのは希歩のいる事務所だった。
駅からバスで10分ほどの場所にある、ちょっとした住宅地の一環に広々とした日当たりのよい2階建てのビルがある。
そこに希歩の働いている法律事務所がある。
2階の看板には「秋田法律事務所」と書いてある。
個人事務所にしては大きめの事務所である。
1階が受付と応接室になっている。
優が受付に声をかけるとすぐに対応してくれた。
少しすると、2階から希歩が降りてきた。
涼し気なブルーのブラウスに紺色のスラックスに黒い靴。
メイクも自然でほんのりとピンク系のリップを塗っている希歩を見ると、春美とは真逆に見える。
「お待たせして申し訳ございません。こちらに、どうぞ」
希歩に案内されて、優は応接室に向かった。
後姿を見ていても、姿勢も良くとても気品がある希歩の姿に優は見惚れてしまった。
「どうぞ、お入りください」
応接室のドアを開けて、希歩が優を通してくれた。
応接室は快適で、観葉植物も置いてありとても落ち着く空間。
ソファーも座り心地が良く、安心して話しが出来そうな雰囲気である。
「わざわざお時間を頂いて、申し訳ございませんでした」
「いいえ、私もご連絡しなくては思っていたところでしたので」
コンコン。
「失礼します」
事務員が冷たいお茶を持って来てくれた。
「失礼しました」
事務員が去ってゆくと、希歩は書類を取り出した。
「先日の話しですが。何故か、偶然が重なってしまいまして。今、娘は私の所にいます。現在は、お預かりしているとう形です。夏休みが終わると、学校も始まりますので。私の下へ返して頂けるのであれば、この書類にサインをお願いします」