副社長の初めての相手は誰?
9年前。
アメリカのある病院で産まれたばかりの赤ちゃんが誘拐された。
その時、病院の防犯カメラに映っていた日本人らしき女性。
帽子を深くかぶっているが、その姿は春美であると断定された。
春美はその頃、優輝と一緒に宗田ホールディングのアメリカ社に出張できていた事が判明。
赤ちゃんが誘拐された2日後。
優輝と春美の仮住まいの自宅前に、産まれて間もない赤ちゃんが捨てられていた。
その赤ちゃんを2人が引き取り養女にしたことが判明。
その後すぐに日本へ帰国した優輝と春美。
誘拐された赤ちゃんを捜索しても見つからず、ずっと捜索を続けて9年。
怪我をして病院に運ばれてきた、宗田絢の治療にあたり輸血が必要の為、血液検査をしたところ春美との親子関係は認められなかった。
その後の調べて、絢は9年前、アメリカの病院で誘拐された赤ちゃんと同じ血液型であることが判明し、希歩との親子関係が証明された。
書類を一通り読み、優は希歩を見つめた。
「…お話しは分かりました。これは、事実なのですね? 」
「はい、間違いありません。…宗田絢…あの子は、私が9年前にアメリカで産んだ子供です」
「分かりました。ですが、絢は息子の子供です。お返しするのは、構わないと思われます。なので、息子の優輝に一度会って頂けませんか? 」
そう言われると、希歩の目が一瞬怯んだ。
「申し訳ございませんが、それはお断り致します」
「何故でしょうか? 」
「仮にも、誘拐事件の犯人の旦那様です。お会いする事はできません。なので、こうして、社長様にお話ししているのです」
そう話す希歩の目が、どこか悲しそうで。
優の胸が痛んだ。