副社長の初めての相手は誰?
優が帰った後。
希歩はトイレに入って鏡で自分の顔を見ていた。
「…なんで気づくの? …ずっと、10年も…分からなかったくせに…」
そう呟いて、希歩は10年前のある事を思いだした。
それは突然だった。
希歩の本名は織田(おりた)きほ。
母と2人で暮らしていた。
母の名は香苗(かなえ)、腕利きの弁護士だった。
海斗とは事情があり結婚できなかったため、1人で育てていた。
そんな母も病気で亡くなり、希歩は1人で生きていた。
きほが24歳の時、優輝と出会って交際が始まり半年後にはプロポーズされ結婚の約束をしていた。
しかしそんなある日。
きほに1通のメールが届いた。
それは…
きほがAVに出ていると、動画付きでメールが届いた。
そのメールに驚き、すっかり動揺してしまったきほ。
動揺する中。
きほは優輝を訪ねて行った。
このメールが優輝にも届いているのではないか? 大丈夫だろうか?
と、心配で。
すると家の中からの話し声が聞こえてきた。
「まさか…こんな事をしているなんて。優輝、お前は知っていたのか? 」
「確か、彼女は弁護士さんと聞いていたけど。こんなビデオに出ているなんて…」
それは優と光が話している声だった。
それを聞いたきほは、既にこのメールが出回っているのだと悟った。
チャイムを鳴らさないまま、立ち去ったきほ。