副社長の初めての相手は誰?


 そのままもう、死んでしまいたいと思ったきほは家に帰って1人、カッターを取り出し手首を切った。


 遠ざかる意識の中…


「きほ! 」

 声がした。

 それは…海斗だった。


 偶然にもアメリカから戻った海斗が、きほを発見した。



 一命を取り留めたきほだったが、あまりのショックで話すこともできないままだった。


 海斗はそのままきほをアメリカに連れて行った…。




 きほはアメリカで少しずつ元気になって来た。

 だがそんな時、妊娠している事に気付いた。


 
 すでに4ヶ月を過ぎていて、赤ちゃんの心音も確認できるくらいだった。

 迷った末、きほは産む決意をした。


 海斗が支えてくれて、無事に出産したきほ。


 産まれたのは可愛い双子の男の子と女の子。

 一度に2人も産まれて驚いたきほだったが、見ているととても可愛くて…。

 感謝で一杯だった。



 男の子には忍と名付けて、女の子には絢と名付けた。

 出生届けはまだ出していなかったが、赤ちゃんの来ている産着に名前を書いておいた。

 しかし出産から3日後。

 絢が誘拐された…。

 他にも出産した人は沢山いたのに、絢が狙われた事に、きほはたまたまそうだったとは思えなかった。


 いくら探しても見つからないままで。


 あのメールの一件もあり、誰かが狙っていると危険を感じたきほは、海斗と相談して顔を整形する事に決めた。


 そして名前も海斗の姓に変え、きほから漢字の希歩に改名した。

 
 ずっとアメリカにいるつもりだったが、日本に絢が居ることが解り戻ってきた希歩。



 絢を取り戻すことになると、優輝との接触は避けられないかもしれないと予測はしたがなんとか優と話しをするだけで絢を取り戻そうと考えていた。


 しかし偶然にも忍が絢に会ってしまった。

 そしてそれがきっかけで、優輝ともあってしまう事になった希歩。


「…もう嫌…。あんな思いをするのは…」

 そっと…左の手首を胸にあてると、希歩の頬に涙が伝った。

 
 そこは希歩が死のうとした時、カッターで切った場所。

 真夏の暑い時でも長袖を着て、傷跡を隠すためにリストバントを巻いている希歩。


「…日本に…帰って来ては行けなかったんだ…」


 そう呟いて希歩は深いため息をついた。
 
< 45 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop