副社長の初めての相手は誰?

 春美と話しを経た後、優は暫くソファーに座り考え事をしていた。


「優さん…」

 思い詰めた優を心配した光るが傍にやって来た。

「優さん、大丈夫? 」

「ああ、大丈夫だよ。なんだかとても、スッキリした気分だ」

「優輝は大丈夫なの? 」

「心配いらない。優輝には、当面この家には帰らずホテルに泊まってもらうように話してある」

「そうなのね」

「私の選択が間違っていたのだろう。春美さんが何を言っても、あの事故の事を隠そうとしないで、公にされてでも優輝を護るべきだったんだ」

「それは、私もずっと後悔していたの。…優輝は、今でもずっと愛している人がいるから…」


 優はそっと、光の手に手を置いた。


「心配するな、もう間違った事は終わらせるから。どんな結果になろうとも、ここで終わらせなければ誰も幸せになれないからな」

「うん…」



 ガチャッ…。

 玄関の開く音がした。


 杖を突く音も響いている。


「春美さん、どこかに出かけたようね」

「ああ…」

「足が不自由だと言うのに、よく一人で出歩けるわよね」

「そうだな」


 ピピッ…ピピッ…。

 優の携帯が鳴った。


 表示を見ると固定電話からかかっているようだ。


「もしもし? 」

(あ、お爺ちゃん? 私、絢です)

「絢? どうしたんだ? 」

(うん。…あのね、忍君が居なくなってしまったの。もしかして、お爺ちゃんの所に行っていないかと思って電話したの)

「忍君? 」

(うん。私の弟だよ)

「え? 弟? 」
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