副社長の初めての相手は誰?

「分かりました。では、一度。絢と話をさせてもらえますか? 」

「はい、それなら1週間待ちます。1週間以内に、名刺に書かれている電話番号へ連絡下さい」

「はい、必ず連絡します」

「もし、ご連絡いただけない時は。この内容を元に、警察へ出頭します。そして、この事はマスコミにも流します」

「分かりました」


 少し辛そうな目をして、優は希歩を見つめていた。


 希歩は母子手帳を鞄の中にしまった。


「それでは、本日はこれで失礼します」


 席を立ち、挨拶をして希歩は社長室を出ようとした。


「あの、待って下さい」

 呼び止められ、ん? と希歩は振り向いた。



 少し涙ぐんだ目をして、優は希歩に歩み寄ってきた。


「貴女に、謝らなくてはならない事があります」

「なんですか? 謝って頂く事なんて、私には何もありません」

「いえ。…」


 希歩を見つめる優の目が潤んできた…。

「貴女に…とても酷い事を言ってしまったので、ずっと謝りたくて…」

「はぁ? 」


 フイッと、希歩は視線を反らした。


「何を言っているのか判りません。…今日は、失礼します」


 そのまま、希歩は出て行った。



「…彼女は…あの時の…」


 フッと、小さくため息をついて優は肩を落とした。


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