副社長の初めての相手は誰?

 外はちょっと涼しくなってきたが、まだ夏の暑さは続いている。

 


 駅前の交差点。


 忍が車の行き交うのを見つめて佇んでいる。

 何かを思い詰めているのか、じーっと何かを見つめている。


 人が歩き出しても忍は佇んだまま動こうとしない。


 
 信号が変わって赤になっても、じっと一点を見たまま佇んでいる忍。



 また信号が青になった。

 忍はやっと動き出した。




 忍はそのまま歩いて、歩道橋へとやって来た。

 
 思い詰めた顔のまま、歩道橋を登って来た忍。


 そのまま歩いて来ると。

 なんと前方から春美が歩いて来た。

 杖を突いていない春美は、ちゃんと両足で歩いている。


 相変わらず露出の高い恰好で、ショートパンツにキャミソールに薄手のカーティガンを羽織っている春美。


 目は虚ろでボーっとして歩いている春美は、前から歩いて来る忍に気づいた。


 忍は春美に気づかないまま通り過ぎた。


「ん? 」

 春美は振り向き忍を見た。




 歩道橋を降りてゆく忍。


 すると、その後ろから春美がやって来た。


 忍は春美に気づかないまま階段を降りてきた。

 
 春美は忍に気づかれないように、そっと近づいてきた。


 そして…


 ドン! と、いきなり忍の背中を押して突き落とした!


「わぁ! 」


 驚きの声をあげて、忍は階段から転げ落ちて行った。


 転げ落ちる忍を見て、春美は不敵に笑った。



 転げ落ちた忍の下に、通り行く人が集まって来た。


 春美は顔色を変える事無く、その場から去っていた。


「誰か! 救急車よんで! 」

 歩行者の一人が叫んだ。


 その叫び声に、偶然通りかかった優輝が振り向いた。


 人だかりを見て、何となく胸騒ぎを感じた優輝は人だかりを割って入って行った。
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