副社長の初めての相手は誰?

「絢の名前は。絢が、僕が居た家に置き去りにされていた時に、着ていた産着に書いてあったのでそのまま名付けました。もしかして、いつか、絢の本当の両親が現れるかもしれないと思って。その時、絢の事が判るようにと思っていました」

「…そうでしたか…」

 
「嬉しかったですよ。…僕が、将来子供が出来たら女の子に「絢」と名付けたいと…」

 
 グッとなにか想いが込みあがってきて…優輝は言葉に詰まってしまい、ギュッと希歩の手を握った。


「…覚えていてくれたんだね? …」


 上ずった優輝の声に、希歩の胸が痛んだ。


 もう二度と会えない人。

 関わってはいけない人。

 絢を取り戻しても、この人を取り戻すことはできない…。

 希歩はそう思っていた。


 だが。

 まさか籍を入れないままで居てくれたとは。

 
 スッと…希歩の頬に涙がつたった…。


「希歩…」

 ギュッと、希歩を抱きしめると。

 優輝も涙が溢れてきた。


「…ごめん。…」

「どうして謝るの? …」

「10年も、見つけられなくて。ずっと、後悔していた。…」

「仕方ないでしょう? 私…整形しているんだもの…」

「でもね、気づいたよ。あの時…通り過ぎただけだったけど…僕のハートがキュンとなって、教えてくれたから。だから、絢を返して欲しいと言われたとき。ちゃんと返してあげようって、思えたよ」


 ハートが教えてくれた。


 そう。

 優輝はいつもそう言っていた。

 ハートが答えてくれたと。


「希歩。ありがとう、絢を産んでくれて。そして、忍君も…」

「…いいえ…」

 胸がいっぱいで、希歩はそれだけしか言えなかった。


「ねぇ。…もう一度、やり直してくれる? 僕と」

「…そんな…。だって私…」

「初めからって言っているだろう? ここから出会って、また恋をした。それでいいんだよ」


 恋をした?  

 …私…恋しているの? …


 胸がキュンとなるをの感じた希歩。

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