副社長の初めての相手は誰?
6 繋がっているハート
忍が目を覚ましたのは翌日の朝だった。
朝日が差し込んできて目を覚ました忍は、ソファーの上で眠っている優輝が目に入った。
まだボーっとした目で、優輝を見ている忍。
ピッ…ピッ…。
優輝の携帯のアラームが鳴った。
アラームの音に目を覚ました優輝。
忍はそっと優輝から視線を反らした。
携帯の時計を見て、優輝は伸びをして起き上がった。
忍を見ると、目を覚ましているのを見て、ちょっとほっとした顔した優輝。
「忍君、おはよう」
声をかけられても、忍は知らんぷりして何も答えない。
「大丈夫かい? どこも痛まない? 」
ムスッとして、忍は黙っている。
「お母さん、昨日来てたけど。絢ちゃんがいるから、家に戻ったんだ。またお昼間に来てくれるからね」
知るか! …お前もどっか行け!
何に怒っているのか、忍自身も解らない。
でも…何故か素直になれない忍。
「…もう帰っていい…」
「え? どうして? 」
「…嫌いな奴の傍になんて、いなくていい…。帰れよ…」
「誰が、嫌いだって言ったんだ? 」
「…言わなくても解る。…俺、あんたが嫌いだから。…あんたも俺を嫌いなの解る…」
ムスッとしている忍が、なんだか拗ねているように見えて。
優輝はなんとなく可愛く思えた。
「僕は、忍君の事。嫌いじゃないよ」
「…嘘だ…」
「嘘なもんか。嫌いだったら、助けたりしないよ」
優輝はそっと忍の頭を撫でた。
「病院で初めて会った時から、ずっと僕のハートは喜んでいるよ。やっと忍君に、会う事が出来たって」
「…ふーん…」
「忍君は、お母さんとそっくりだね」
「…知るか、そんな事…」
可愛くない言葉を言う忍だが、なんとなく、どこか照れているようにも見える。
「もういいよ、今はゆっくり休んで。ちゃんと怪我を治そう。治るまで、僕がずっと着いているから」
「いらねぇよ。…さっさと帰れよ…」
今にも泣きそうな忍の目を見ると、優輝も目が潤んできた。