副社長の初めての相手は誰?
ふと、床を見ると血の付いたナイフが落ちていた。
ポタッ…ポタッ…。
男性社員の首から血がしたたり落ちてきた…。
「嘘…」
どうやら、春美が脅していたナイフが首にあたったのか、腕を回した時にか、男性社員の首を切ったようだ。
「え? 信じられない。せっかく精子を提供してもらえる人だと思ったのに」
血相を変えることもなく、春美はそのまま服を着てトイレから出て行った。
春美が出て行った後、男性社員の首から溢れて来る血が床にどんどん流れて来た…。
少しして。
清掃の為に入って来た業者の女性が、男性社員の遺体を発見した。
発見されたときは、既に男性社員は息絶えていた。
服の乱れから誰かに襲われたと断定された。
ビルには防犯カメラが設置されている。
そのカメラから、男性社員と春美が一緒に入って行く姿が映されている。
トイレの前のカメラにも一緒に、春美が男性社員と入って行く姿が映っていた。
警察は春美を重要参考人として指名手配する事にした。
その事は優の耳にも入って来た。
警察からの調査で、優は春美はただの居候であると話した。
10年前事故で足が動かなくなったと言われて、春美がずっと居座っていた事も話した。
そして最近、調べて春美が浮気していることと、相手から訴えが出ていた事も全て話した。
優輝にもこの件は知らされた。
驚いて言葉も出ない優輝。
だが、これを機会に社内でも春美がずっと居候であって実は優輝とは結婚していなかったことを公表する事にした。
10年前の不可解な事件。
そして優輝の心から愛した人が、いわれのない偽造工作で深く傷つき姿を消した事も…。
バタバタした社内に、また、不幸な知らせが届いた。
お弁当にガラスを混入された女子社員が昨日死亡した事…。
ずっと昏睡状態だったが、息を引き取ったと…。
春美に背中を刺された女子社員は回復して退院したが、現在は自宅療養している。
夕日が差し込む社長室に、優輝がやって来た。
「父さん」
「優輝、大丈夫か? 」