副社長の初めての相手は誰?

「僕はもう大丈夫だよ。なんだか、スッキリしているんだ。やっと、本当の自分に戻れたような気がするから」

「そうか」


 優の傍に歩み寄ってくると、優輝はとても優しい目で見つめてきた。


「父さん。僕の本当に愛している人が、ちゃんと生きていくれたよ」

「そうか…良かったな」

「うん。父さんにも、会って欲しいんだけど」


 優はそっと微笑んだ。


「もう会っているよ」

「え? 」

「一番初めに、私に絢を返して欲しいと訪ねて来たんだ。でもその時、とても綺麗な目をしていて、お前と映っていたあの女性と同じ目をしていたから。何となく、感じていたよ」

「そうだったのか…」


「もう心配しなくていい。お前は自分の幸せを考えればいい、私の為にすまなかったな10年も苦しめてしまって」

「そんな事ないよ。絢が居てくれたから、僕は苦しいなんて思わなかったよ」



 窓ガラスから見える夕日がとても綺麗に写っている。

 なんとなく全てを歓迎してくれているような夕日を、優輝は優と一緒に暫く見ていた。









 それから3日後。

 指名手配されていた春美が逮捕された。

 
 行く当てもなくさ迷っていた春美を、巡回中の警察官が逮捕したようだ。



 春美は逮捕されても、悪びれる事無く憮然としている。

「ストーカーを退治しただけ」

 と、開き直っている春美。


 しかし事故で足が動かなかうなくなった事は、全くの嘘だったことがすぐに判明した。


 その事に関しても春美は


「ストーカー女から、優輝さんを護る為にそうしたの」

 と言っている。


 全て、優輝に告白した女性社員もストーカーだったから退治したと言って。

 殺害したとは認めずあくまでも「退治した」と言っている。



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