副社長の初めての相手は誰?

 春美が逮捕された事は希歩の耳にも入って来た。

 ホッとしたような、ちょっとまだ複雑のような気持の希歩だった。




 夕方になり。

 忍が夜は警備がしっかりしているから1人でも大丈夫だと言って、絢といて欲しいと言ってくれたため希歩は家に戻て来た。



 絢はちゃんと留守番してくれていて、お昼も自分で作って食べていて、食器も洗ってくれていた。


 怪我も完治して来て、顔の傷も綺麗になってきた絢は優輝とそっくりな顔立ちをしているのが良く判る。


 そんな絢を見ると、希歩は嬉しくなると同時に、どこか優輝を恋しがっている自分がいる事に気が付いた。


(もう一度初めからやり直そう)


 優輝はそう言ってくれた。

 希歩もそうしたい気持ちはある。

 でも…


 自分の部屋で鏡を見て、希歩は小さくため息をついた。




 10年の月日が過ぎて。

 すっかり変わってしまった自分に、ちょっと自信がないのもあった。

 出産して体系だって変わっているに違いない。


 そして…

 手首には一度死のうとした傷跡もある。


 こんな自分を全て、優輝は本当に受けりえてくれるのだろうか?


 優輝は優しいから、もしかしたら、春美から酷い仕打ちをされた事に申し訳ないと思って、そう言ってくれているのかもしれない。



 整形した事を後悔しているわけじゃないけど…。



 どうしたらいいのか、希歩自身も解らないままだった。


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