副社長の初めての相手は誰?
7時を回る頃、絢も起きてきた。
三人で朝食を済ませて。
希歩は海斗に電話をかけた。
「お父さん。今日は忙しい? 」
(…別に。今日は、たまたま休みで何も予定がない日だけど。なんかあったのか? )
「あの…あって欲しい人がいて…」
(ん? …恋人か? …)
「そうなんだけど。…その…」
(何を戸惑っているんだ。お前が愛した人なんだろう? それなら、私がどう思おうとも堂々と紹介したらいい。お前が選んだ人なら、私は反対しないから)
「はい、分かりました」
(何時に来るんだ? 午前中にくるか? )
「そうしようと思っているけど、いい? 」
(ああ、じゃあ待っているから)
電話を切ると希歩はホッと一息ついた。
朝食を済ませて、優輝と絢を連れて希歩は海斗の下へ向かった。
海斗の自宅は事務所の2階。
今は一人暮らしをしている。
アメリカでは恋人がいたようだが、あまり長続きはしなかったようで、殆ど特定の人を作らず海斗は1人で過ごす事が多い。
それは…。
いつも手帳に挟んでいるのは、心から愛する人の写真。
それは希歩の母の写真である。
名前は穂香(ほのか)と言う。
海斗と同じ弁護士で、お互い同じ事務所だった。
愛し合い結婚すると思われた2人だったが、結婚はしないまま離れてしまった。
海斗は当時アメリカに事務所があり所属している国際弁護士で、日本とアメリカを行き来していた。
そんな海斗にある資産家の娘との結婚話が舞い込んできて、親の顔を立てるために海斗はお見合いをした。
その事が穂香を傷つけ、海斗はその人と結婚するのだと思い込んでしまい姿を消した。
海斗がいくら探しても、意図的に姿を消している穂香を見つける事は出来ないままだった。
再会したのは希歩が5歳の時。
日本に帰ってきた海斗と偶然再会した事だった。