副社長の初めての相手は誰?
病院から次は優と光の下へ向かった希歩達。
連絡を受けて優と光は、とても楽しみに待っていた。
「お爺ちゃん、おばあちゃん。久しぶり、元気だった? 」
絢が満面の笑みで入って来ると、光は絢をギュッと抱きしめた。
「絢。良かったわね、傷がすっかり治って」
「うん。お母さんが、ずっと看ててくれたからね」
優と光は希歩をじっと見つめた。
「希歩さん。来てくれて、有難う」
優は希歩に歩み寄ると、ギュッと抱きしめた。
「…本当に申し訳なかった。…」
優はちょっと涙ぐんだ声で希歩に謝った。
「あの…。もういいですから、そんなに謝らないで下さい」
そっと体を離して、希歩を見つめる優の目は潤んでいた。
「希歩さん。…また会えて、嬉しいわ…」
泣きそうな顔の光。
そんな光に、希歩はそっと微笑んだ。
「お爺ちゃん、お婆ちゃん。良かったね、あの人が逮捕されたから。ちょと安心したでしょう? 」
「そうだな。でもね、この家は売りに出そうと思っているんだ」
「え? そうなの? 」
「ちょっとこの家には、あまり良い思い出がない。だから、別の所にもう一度家を建てようと持っている。その間、どこかマンションでも借りて住もうと思っているよ」
絢は希歩を見た。
希歩は絢が何が言いたいのかすぐに判った。
「あの。…それでたら、我が家に来ませんか? 」
「え? 」
驚く優に、希歩はそっと頷いた。
「それほど広くはありませんが、我が家には部屋数もありますし。駅からもそれほど遠くはありませんので」
優と光は顔を見合わせて、そっと微笑み合った。
「そうさせてもらおうかしら。広い家より、狭くても家族が一緒に居れば楽しいものね」
「そうだな」
「わぁーい! じゃあ、お母さんの家でお爺ちゃんも、お婆ちゃんも一緒に暮らせるのね。良かったね、お父さん」
ギュッと優輝にしがみ付く絢。
優輝はホッとした。
10年ずっと遠回りしていたが、その蟠りもスッと消えたようだ。