揺蕩いの桜の下で君想ふ
空見上げ赤く染まるは紅葉なり
あの遠出から数か月が過ぎ、秋がやって来た。私と結桜は、公園の敷地内にひっそりと咲く紅葉を見上げる。2人で遊びに行った帰り道、休憩に、とこの公園にやって来た。
「……綺麗だね」
私が呟くと、結桜は「そうだね」と微笑んだ。
何か良い句が浮かびそうな予感!私は、ひたすら考える。
「……夕暮れの冷たき風で散る紅葉」
私の隣で、結桜が呟く。
「…………うーん……」
「……何を考え込んでるの?」
結桜は、私を見つめて問いかけた。私は「何か、句が思いつきそうなんだ……」と頭を回す。
「そ、そっか……とりあえず、帰ろっか」
腕時計を見つめ、結桜は私に微笑んだ。私は「そうだね」とうなずく。
結桜と道を歩き、途中で結桜と別れて1人で家に向かって歩いた。
「あれ、桜谷さんじゃない?」
不意に声が聞こえ、私は声のした方を見る。私と同じ学年の子が近くにいた。あれって、陽子(ようこ)ちゃん?
「……やっぱりそうだ。こっちに来なさい」
陽子ちゃんは、私の腕を引っ張って歩き出す。
「ちょっ……私、早く帰らないと……」
「黙りなさい!」
陽子ちゃんに連れられたのは、近くの路地裏。とても気味悪い。
「あなた、本当に邪魔!結桜くんは、私がもらうんだから!!」