揺蕩いの桜の下で君想ふ
嫌な予感がした。信じたくなかった。だけど、結桜は――その日に亡くなった。
結桜のお母さんからそう知らされた時、私は泣き崩れ、食事もあまり食べれなくなった。
今日は、始業式。放課後、私は窓から見える桜を眺めていた。
「……小春ちゃん」
声をかけられ、顔を上げると、先生と結桜のお母さんが私の席の近くに立っている。
「これ、結桜の部屋から出てきたの」
結桜のお母さんは、私に手紙を渡した。私は、手紙を開いて目を通す。
お元気ですか?
俺が居なくなっても笑顔でいますか?
小春は、笑顔が素敵だから。笑顔を忘れないで。
小春にお願いがあるの。
俺以外の誰かを愛して、幸せになって。
……本当は、生きたかった。小春と結婚して、幸せになりたかった。だけど、もう叶わない。
最後に、俳句を小春に送ります。
揺蕩いの桜の下で君想ふ
ありがとう。俺は、小春のことを愛しています。
手紙から顔を上げ、私は泣き崩れた。結桜のお母さんは、無言で私を抱きしめてくれた。