揺蕩いの桜の下で君想ふ



嫌な予感がした。信じたくなかった。だけど、結桜は――その日に亡くなった。

結桜のお母さんからそう知らされた時、私は泣き崩れ、食事もあまり食べれなくなった。

今日は、始業式。放課後、私は窓から見える桜を眺めていた。

「……小春ちゃん」

声をかけられ、顔を上げると、先生と結桜のお母さんが私の席の近くに立っている。

「これ、結桜の部屋から出てきたの」

結桜のお母さんは、私に手紙を渡した。私は、手紙を開いて目を通す。


お元気ですか?
俺が居なくなっても笑顔でいますか?
小春は、笑顔が素敵だから。笑顔を忘れないで。
小春にお願いがあるの。
俺以外の誰かを愛して、幸せになって。
……本当は、生きたかった。小春と結婚して、幸せになりたかった。だけど、もう叶わない。
最後に、俳句を小春に送ります。

揺蕩いの桜の下で君想ふ

ありがとう。俺は、小春のことを愛しています。


手紙から顔を上げ、私は泣き崩れた。結桜のお母さんは、無言で私を抱きしめてくれた。
< 7 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop