その表情を手に入れたい
「おー全員来てるなあ。そこの女子座れよお」
正確には言わないけど、満月のような輝きをした
頭の先生が言う
あ、さっきのギャルっぽいメイクをした女子だ
と思いながら視線を右に動かす
「........ん??えっっ!」
隣の席に人がいたのだ。全く気づかなかった。
いつ座ったんだろう。気付かれずに座れるって...
無表情で、前髪が伸びきっている男子。顔は見えないけど、無表情なのがわかる口をしていた。
おはようと声をかけようと思ったけど、
変に友達スタートをきりたくなくて、躊躇って
挨拶をするのは、やめた。
「よーし、じゃあ自己紹介だなあ、
出席番号順に自己紹介、してってくれー」
独特の間合いのある喋り方だった。出身地がここじゃないことが、一瞬でわかった。
名前とニックネーム、特技や、好きな物を
順調に話していく、みんな。緊張しつつ、
席を立つ。
「えーっと。出席番号11番熊谷凛です。みんなには凛ちゃんとか、りんりんって呼ばれてます。
好きな物はスイーツです。スイーツ好きの人
駅前にあるおしゃれなカフェに一緒に行きたいです!!よろしくお願いしますっ!」
席に着くと
拍手が聞こえてきた。よかったあ
第1ステップちゃんと踏めた........
気になるお隣さんの自己紹介がやってきた
隣の子は席を立つ、だるそうにしているせいか、
上履きが床を擦っているキュッという音が鳴っていた。
「熊西 翔(くまにし しょう)です。」
席につく。
ん?それだけ?と思いつつ、動揺の空気が
流れる中、拍手をした。同じ熊の字が入っていて
それをきっかけに話しかけようと
近づく方法を考えているうちに自己紹介の時間は
終わってしまっていた。