夜空に君という名のスピカを探して。
「大声を出して、どうしたんだ?」


 するとそこへ、この張り詰めた空気に気づかないお父さんが呑気な顔をしてやってきた。

 そもそもお父さんが仕事を突然やめてお母さんを困らせたりしなければ、こんなに反対されることもなかったかもしれないのに。


「お父さんのせいだから!」

「なんだよ楓、藪から棒に」

「お父さんが好き勝手したせいで、私は自由に好きなことさせてもらえないんだよ!」


 私は苛々していたせいで、お父さんにまで当り散らす。

わけが分からないという顔をするお父さんに、さらに苛々して罵声を浴びせてしまった。


「楓、お父さんに謝りなさい」

「よく分からないけど、楓、お母さんを困らせてはいけないよ」


 お母さんもお父さんも、まるで人格者かのような物言いで私を咎める。

 今の言い方は私が悪いってことくらい、百も承知だ。

でも言った手前、引き下がるのも癪で、述べた意見は間違っていないと譲れないものもあった。

 大人の勝手な見解を押しつけて、私を押さえつけようとする両親。

それに私の人生は私だけのものなのに、という思いが膨れ上がって爆発しそうになる。

 この世界中のすべてが私の敵になったかのような孤独感に苛まれて、家族なのに分かってもらえないことが辛くてたまらなかった。


「もう、いい……」

 私は唇を噛んでゴシゴシと制服の袖で涙を拭うと、お父さんとお母さんをキッと睨みつけた。


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