夜空に君という名のスピカを探して。
『宙くんの未来を、私も一緒に生きたかった』

「っ……」


 宙くんが息を呑む。

ついに言ってしまったと少しだけ後悔しながら、それでも止められなかったのだと悟る。

知ってほしかったのだ、私の気持ちを。


『ずっと……一緒にいられるような気がしてたの』


 ツゥーッと頬に温かい涙が流れる。

それが私のものなのか、それとも宙くんのものなのかは分からない。

ただ胸が苦しくて、もしかしたら彼も同じ気持ちなのかもしれないと思った。


「なんだよ、それ……。ずっと、いたらいいだろ」


 宙くんの声が震えていた。

 私は返す言葉を考えたけれど「そうできたらいいのにね」「それはできないよ」、どの言葉も彼を傷つけてしまう気がしてなにも言えなかった。


「いまさら、勝手にいなくなられても困る。楓はもう、俺の一部なんだぞ……っ」


 泣いているのは、彼もだった。そう核心した瞬間、愛しさが膨れ上がる。

誰かをこんなにも愛しいと思えたこと、それだけで私の生に意味があったと思える。


『宙くんも、私の一部だよ』


 別れは半身をもがれるような痛みを、私たちに連れてくるだろう。

それがいつになるかは分からないけれど、きっとそんなに遠い話ではない。


「だったら……!」

『私だって! 私だって、宙くんのそばにいたいよ……っ』


 でも、私にどうこうできる問題じゃない。

どんなに君のそばにいたくたって、私はもうこの世にはいない存在なのだから。


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