夜空に君という名のスピカを探して。
「おい、聞いてるのか……って、まさかな。疲れて幻聴でも聞こえたんだろう……はぁっ」
声の主はため息をつき、それに合わせて視界が下がる。
どうやら俯いているらしく、胸の膨らみもない平坦な身体が視界に入る。
それでハッキリとした。
私の意志とは関係なしに動くこの身体は、私のものじゃない。
『まさか私、この人に憑りついた?』
「お前、またか! まさか幽霊? いや、そんな非現実的なものは信じないぞ。なにかからくりがあるんだろう、白状しろ」
騒いでいる彼の声も耳に入らないほど、私は混乱していた。
なにが原因かは分からないけれど、私は死んでしまったんじゃないだろうか。
でなければ、目覚めて他の誰かの身体の中にいるなんておかしい。
『まさか』と『なんで』の文字が頭の中を堂々巡りする。
悩みに悩み抜いた末に私がたどりついた答えは、なんらかの理由で死に、幽霊としてこの男に憑りついたという仮定だった。
『本当に幽霊かも、私……』
「その手には乗らないぞ、いい加減に出てこい」
出ていきたいのは山々だけど、それができないから困っている。
というか、身体がないのだからどうしようもない。出る出ないの以前の問題なのだ。
「どうせ、クローゼットにでも隠れてるんだろ」
彼はもう一度立ち上がると、クローゼットへ近づいて両手で左右に開け放つ。
その勢いにカチャンッと、コートやセーターのかかったハンガーが揺れる。
しきりにクローゼットをのぞく声の主はそこに誰もいないと気がついて、二、三歩後退った。
声の主はため息をつき、それに合わせて視界が下がる。
どうやら俯いているらしく、胸の膨らみもない平坦な身体が視界に入る。
それでハッキリとした。
私の意志とは関係なしに動くこの身体は、私のものじゃない。
『まさか私、この人に憑りついた?』
「お前、またか! まさか幽霊? いや、そんな非現実的なものは信じないぞ。なにかからくりがあるんだろう、白状しろ」
騒いでいる彼の声も耳に入らないほど、私は混乱していた。
なにが原因かは分からないけれど、私は死んでしまったんじゃないだろうか。
でなければ、目覚めて他の誰かの身体の中にいるなんておかしい。
『まさか』と『なんで』の文字が頭の中を堂々巡りする。
悩みに悩み抜いた末に私がたどりついた答えは、なんらかの理由で死に、幽霊としてこの男に憑りついたという仮定だった。
『本当に幽霊かも、私……』
「その手には乗らないぞ、いい加減に出てこい」
出ていきたいのは山々だけど、それができないから困っている。
というか、身体がないのだからどうしようもない。出る出ないの以前の問題なのだ。
「どうせ、クローゼットにでも隠れてるんだろ」
彼はもう一度立ち上がると、クローゼットへ近づいて両手で左右に開け放つ。
その勢いにカチャンッと、コートやセーターのかかったハンガーが揺れる。
しきりにクローゼットをのぞく声の主はそこに誰もいないと気がついて、二、三歩後退った。