夜空に君という名のスピカを探して。
「おせっかいな幽霊」

『あのねぇ、これは経験者からの助言なんだよ。私みたいに中途半端な生き方して死んじゃうと、後悔するってことを言いたいの』


 今日死ぬってわかっていたなら、両親に反対されても夢を突き通したはずだ。

分かってもらえるまで、両親を説き伏せたはずだ。

なんて、未来は誰にも見えないから仕方のないことなのだけれど、先がある彼には私と同じ過ちを犯さないでほしい。


『ということで、私がいるうちは加賀見くんの人生を楽しくするからね』


 私が彼に憑りついたことに、意味があるとしたら。

きっと損得でしか、有益かそうでないかでしか、世界を見られない加賀見くんの凍りついた心を溶かすためなのではないか。

そんな使命感に突き動かされて、自分でも驚くくらい必死にそう言っていた。


「俺は許可してないぞ、嫌な予感しかしないからやめろ」

『残念、もう決定事項ですので』


 ふてぶてしい言い方をされても、私はふふんと笑う。

これからは話しかけるなと言われても無視しよう。

いつこの身体から出られるかは分からないけれど、そばにいる間だけでもなにかできたら、私の人生も少しは意味のあるものだったって思えるかもしれないから。


『さっそく明日から『加賀見くん、友達百人できるかな』計画立てなきゃ』

「なんだ、その小学生向けの計画は……却下」

『その却下を却下!』


 加賀見くんとガヤガヤ騒ぎながら歩く帰り道。

死んでなにもかも失って、普通なら戸惑っておかしくなっているところだけど、私は笑えている。

それはたぶん、私が今ひとりじゃないからなのだろう。

 だから、ありがとう加賀見くん。

なんて、本人にはなんとなく言いにくくて、私は心の中でそっとお礼を言った。

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