夜空に君という名のスピカを探して。
「そのお父さんと同じ夢だなんて、血は争えないって感じだよね」

「楓、なにひとりでブツブツ言ってんの?」


 ため息をついていると、それに気づいた彩が顔をのぞきこんでくる。

私は白紙の進路希望調査票を指さして、苦笑した。


「これに悩まされてるわけよ」

「楓は小説家になりたいんだっけ?」


 由美子もそう言って、私の机に手をつくと進路希望調査票を見下ろす。


「うん、だけどお母さんに反対されるだろうなーって」


 私が物書きになりたいということは、親友のふたりだけが知っている。

文化祭のあと、プチ打ち上げと称してふたりとカフェに行った。

私は興奮冷めやらぬまま、物語を創作する楽しさについて何時間も語り聞かせたのだ。


「でもさー、楓の人生なんだし、好きに生きなきゃ損だよ」

「まぁ、彩の意見は極端だけどさ、茨の道を進む覚悟で一握りの夢に突き進むか、諦めて安定を求めるかは楓が決めることだよね」


 珍しく意見を揃える彩と由美子の言葉から励ましを感じて、私は口元に笑みを浮かべる。

それから、ひと呼吸置いて決心する。


「彩、由美子……うん、決めた。私、時枝彩は物書きになります!」


 決意表明を聞いたふたりから「「おぉっ」」という歓声と拍手が贈られる。

 言葉にすると本当にやれる気がして、私は強気にシャープペンを取り出すと進路希望調査票の希望する進路の欄に【物書き】と大きく夢を書き出したのだった。



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