夜空に君という名のスピカを探して。
「そこまで言うのなら、いいだろう。自分で決めたことならば、きちんとやり遂げろ」


 一瞬、なにを言われたのかが分からなかった。それは宙くんも同じだったようだ。

驚いてしばらく口をきけないでいると、お父さんが立ち上がって、あろうことか宙くんの肩に手を乗せる。


「これからのお前の努力を見ている。ちゃんと自分の力で叶えることだ」

 言葉少なにそう言って、ダイニングテーブルのほうに戻っていくお父さん。

その背中を視線で追う宙くんの視界が、ほんの少しだけ歪んだ。

「ありがとう、父さん」

「さぁ、夕飯にしましょう」


 お母さんが涙ぐみながら笑顔で宙くんの背中を押して、お父さんの前の席に座らせる。

今日の夕食は私が幽霊になって初めて見た、加賀見家の家族団らんな光景だった。



『よかったね、宙くん』

 夕食を終えてベッドに横になる宙くんに、私は感動冷めやらぬまま声をかけた。

「ありがとな、楓」

『なに言ってるの、頑張ったのは宙くんでしょ。私はなにもしてないよ』

「なに言ってるの、は俺のセリフだ」


 それくらい察しろとばかりに尖り声で言う宙くんに、私は間抜けなほどキョトンとしてしまう。

彼の言いたいことに、見当がつかなかった。

黙りこくっていると、痺れを切らしたのか、宙くんは「あのな」と呆れながらも話してくれる。


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