夜空に君という名のスピカを探して。
四章 ふたりで描くドリーム
それは、とてつもない違和感だった。
目を覚ましてすぐに広がる風景に違和感を覚える。まず、宙くんの単調な目覚ましの音がない。
それに周りには沢山の人がいて、カリカリとシャーペンが紙に文字を刻む音が淡々と聞こえるのだ。
「小テストが終ったら、プリントを裏返しにして下さいね」
教壇に立つ担任の先生が生徒に声をかけている。
小テスト……?
ということは今、テストを受けてる最中ということだろうか。
それを裏づけるように、宙くんの手も問題を着実に解答していっている。
私、宙くんの意志とは別に寝ていた?
宙くんはちゃんと起きて学校に来ているのに、それまでの記憶がまるでない。
『そ、宙くん』
「――っ!」
私が声をかけると、宙くんはビクッと肩を震わせて息を詰まらせる。
突然話しかけたせいで、驚かせてしまったらしい。
シャーペンを動かす手をピタリと止めて、目を瞬かせている。
それからややあって、テストの問題用紙の余白に【楓か?】と書いた。