夜空に君という名のスピカを探して。
「お母さん、真剣に聞いてよ」

「はぁっ、何度話してもいいとは言わないわよ。お母さんは楓より何十年も長く生きてるから、あなたの思い描いている通りの未来にはならないって想像がつくのよ」


 人生経験が豊かなお母さんが言うことは確かに正しいけど、でも私の人生じゃん。

一握りの夢かもしれないけど、諦めたら絶対に叶わない。

だから確約のない未来でも、私は物書きの道に進みたいって言ってるのに、どうしてわかってくれないの?


「私は諦めたくないの、お願いお母さん!」

「ダメよ、あなたには苦労して欲しくないの。だから、この話はもう終わり」


 私が夢を打ち明けるのにどれほどの勇気を振り絞ったかも知らないで、一方的に話を終わらせるなんていくらなんでもひどすぎる。

「どうして……。私の話をちゃんと聞いてくれないの?」


 どうして、勝手に私の夢を諦めるのだろう。

お母さんに認められないと、私は夢を持ってはいけないのだろうか。

私の未来が分かる預言者だというのなら別として、確証もないのに頑なにダメだと連呼するのは理不尽だ。

 たくさんの悔しさと疑問が、胸にモヤモヤと浮かぶ。

言葉に出来ない複雑な感情が、なぜか目元を熱くして泣いてしまいそうになった。


「聞いてるじゃない、それで助言もしたわ。それでもやりたいって言うなら、本業の傍らで細々とやったらいいじゃない」


 ぐずる子供を相手にするかのように、お母さんは呆れ混じりに言う。

 でもそれって、趣味に留めておけってことだ。

そんなことを言って、私がお母さんの言う通りにして後悔したら責任をとってくれるのだろうか。

娘の夢を潰してなにが楽しいのかと、苛立ちが募る。


「どんなに心では否定してても、楓なら出来るって最後には応援してほしかったのに……」

「楓、お母さんはあなたのためを思って……」

「そんなの、私のためでもなんでもないじゃん! お母さんの思い通りの未来を私に押しつけたいだけなんだよ!」


 つい声を荒らげてしまった、だけど止まれなかった。

 私のためを思うなら、なんで背中を押してくれないの? 

私のためだって言いながら、お母さんは自分の価値観を押しつけてるだけだ。

 でも、それに言い返せない自分が悔しくて、目尻から収まりきらなくなった涙がぽろりとこぼれる。


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