半径1kmの恋物語
「君…今いくつよ?」
「もうすぐ24になります。」
ほら、やっぱり若い…。
「私、あなたより年上だしアラサーなんですけど。」
「はい。それが何か?…もしかして、市川さん、俺の事信じてないんですか?」
「信じろって言う方が無理でしょう。」
あの王子が…?
何度考え直してもやっぱり信じられない。
「信じてください…!俺、入社して間もなくオフィスで迷子になってた所を市川さんに助けてもらって、それから本気で気になってて…」
迷子…?
そう言えば、昔リクルートスーツを着た冴えない眼鏡男子が営業部の場所が分からなくてウロウロしていた所を案内してあげた事がことがあったっけ…。
「…あれ、君だったの?」
「はい!信じてもらえました?」
確かにエピソードは合っているけれど…。
「えっと…その、ありがとう…。じゃ、私も仕事があるから。その箱、元々営業部に届ける予定だったので後はよろしく…」
すっかり思考回路が停止した頭で振り返り、エレベーターのボタンを押そうとすると、それを引き止めるように王子の手が重なる。
「ちょっと待ってください!俺、ようやく市川さんに告白出来たんで、これからアタックしても良いですか!?」
…王子、本当に本気なの!?
「これ、俺の名刺です。あ、ちょっと待って…!」
と言いながら、ダンボール箱を机代わりにして名刺の裏に何かを書き始める。
「これ、俺のプライベートの番号なので!今度連絡下さい!」