半径1kmの恋物語

大福



最近、お弁当仲間の亜耶と社内のイケメン営業マンが告白したらしいという噂が立つようになった。

「で、亜耶さん。その噂は本当なんですか?」

味も良く上手に巻けた卵焼きを1口で頬張りながら亜耶の表情を伺うと、彼女の眉間にシワが寄った。

「まさか明人くんも信じてるの!?明人くんだけは噂に惑わされないと思ってたのに...。」

「え。違うんですか?」

「絶対何か裏があるはずだよ!」

「でも裏が無かったら良い話ですよね?なんでそんな迷惑そうな反応するんですか?俺は素直に応援するのに。」

きっと明人にはわからないだろう...。

社内のイケメン有名人が平凡な亜耶に一目惚れしただなんて嘘に決まっているとバカにするような人もいれば、僻みの眼差しを向けてくる人もいる。

とにかく亜耶は注目されてしまって参っているようだった。

「っていうか明人くんも罪作ってるんだからね!」

「はあ!?それ八つ当たりですか?」

「八つ当たりじゃないし。」

明人の見た目も悪くは無く、マッシュルームヘアが良く似合う今どきの男の子だ。

毎日亜耶と昼食をとっていれば2人が付き合っているのではないかと思う人も少なからずいるだろう。

そんな亜耶が王子からアタックされていると知られれば、まるで亜耶が王子と明人を両天秤にかけていると思われても仕方が無い。

人からどう見られているのかを気にする亜耶からすれば、今はオフィスの隅で小さくなっていたい気分だ。



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