半径1kmの恋物語


亮輔はすぐに先ほどの若い女性店員を呼び出してランチセットとホットコーヒー、それから有無を言わさずミルクティーを頼んだ。

決断力がある亮輔。

きっと仕事でもそういう所が頼りやすくて後輩にも慕われるのだろう。

だけど相談も無しに勝手に決める所が今は嫌い。


「前に加奈子に会ったのいつだったっけ?」

「9月じゃない?連休の時。」

「あー、そっか。あの後仕事が大変でさー。土日も死んでたわ。」

「大変なんだね。」

「まあね。そう言えばクリスマスどうする?俺24日会社の飲み会入っちゃって、25日なら空いて…」

「別れよう。」

「えっ?」

どこでこの言葉を切り出そうか迷っていた。

本題は早い方がいい。

加奈子の亮輔に対する想いは嫌悪感ばかりでは無い。

5年も付き合っていたせいか情の欠片ぐらいはある。

20代半ばにもなると周りも結婚する人が増えるから、自分もゆくゆくは亮輔とそういう事になるのでは無いかとひっそり待っていた。

しかし、半年前に亮輔のベッドのサイドテーブルの下に私のではないピアスが片方だけ落ちていた。

こんなにもベタな展開に加奈子の淡い願望はガラガラと音を立てて崩れていく。

それだけで浮気を決定付けるのはあまりにも証拠不足なのはわかっている。

だけど自分との時間が少なくなっていき、何かと仕事が忙しいと言い訳しているあたり、もしかして…と不安を募らせていた。

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