半径1kmの恋物語
「ごめん。出来心だったんだ。でも俺の中では加奈子が1番なんだよ。それだけは信じて。」
…いや、なんで女に1番とか2番とか順位がつかなきゃならないのよ。
そもそもの亮輔の考え方に加奈子は絶望した。
「バカじゃないの。もう信じられるわけ無いでしょ。」
「チャンスはもう貰えない?」
亮輔の口から出てくる安っぽい言葉の数々にどんどん気持ちが冷めていくのがわかった。
情の欠片もついに無くなってしまった。
「もう無理。大体、私がミルクティー好きじゃないのを忘れてるくらいなんだから。私達、もう終わってるよ…。」
加奈子は紅茶が好きだけど、レモンもミルクも入れない派だ。
それは付き合い当初からお約束だった。
亮輔もそれを知っていたはずなのに、すっかり忘れていた。
しまった、とテーブルに肘をついて目を伏せた彼からは誰がどう見ても絶望を感じている。
自業自得でしょ。
「そういうわけだから。もう終わりにしよう。」
「加奈子…」
席を立って1000円札をテーブルに置いた。
卑怯かもしれないけど、と申し訳なさを感じながら加奈子は逃げるようにお店のドアを開けた。