おっさんキューピット
「俺は小学校の頃から周りから浮いていたんだ。俺は周りより勉強が得意で、好きなことも違って。でも、あることがきっかけで他の人とも仲良くなれたんだ。だから、中学受験をして、俺と同じく天才って言われるような人たちと居れば他の人とも遠回りしないで仲良くなれるって思ってたんだ。だけど現実はさ、俺以上に頭のいいやつなんていなくてさ、成績は常に学年トップ。それだけならいいんだけど周りの奴らは俺を妬んでいろんな嫌がらせをしてくるんだよ。休み時間に読んでた本がトイレで水浸しで見つかったり。教師にも言ったけど、奴らはこの学校でいじめなんかあったら大問題だから表沙汰にしないし、親もせっかく入ったんだから毎日通えって。もう疲れたんだよ。こんな脳みそいらなかった。みんなと同じくバカでバカなことやって生きたかったよ」

うつむく少年に男は何も声をかけなかった。
中途半端な慰めはかえって彼を傷つけるだけだと知っているからだ。

「でも、本当に君がそうなっちゃった理由はそれだけなの?」

少年はあっけにとられた。

「どういう意味だ?」

「さっき言ってた女の子のことは関係ないのかなって」
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