おっさんキューピット
少年は彼女と別れたあの日のことを思い出した。彼女を見送った後、心にぽっかりと穴が空いたようであった。友達ができて、以前よりも誰かといる時間は増えたが、それでもその穴は埋まらない。
その穴は電話を禁止されてからより大きくなった気がする。

「だったら久しぶりに会いに行ったらどうだ？」
男の突然の提案に少年は顔を上げた。

「でも、そんな金ないし、何時間もかかるんだぜ？急に俺なんかが会いに行ったら迷惑だと思うし」

「金は俺が出すし、学校行ってないなら暇だろ？相手の迷惑じゃなくて自分の気持ちで考えてみな？」
少年はその提案を受け入れそうになったところで我に返った。

「でも、おっさんにそんなことしてもらう義理もねぇし、行くとしても新聞配達なんかして金稼ぐよ」

「実は俺にはあるんだよね。新聞配達なんかしてたら何ヶ月かかるかわからんし、長い間
そんな君をみてられん。ついでに髪もピアスも戻そう」

かなり強引に押し切られた形にはなったが、必要な費用は男が全て出すことで決まった。
女の子はサプライズに弱いという男の提案により事前に告知をせず会いに行くことになった。それは嫌だと少年は言ったが、スポンサーには逆らえなかった。

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