おっさんキューピット
彼女の部屋はおおよそ女の子には似つかわしくない本や実験道具で埋め尽くされていた。
4年ぶりの再会にも関わらず彼らの間にはぎこちなさはなく、別れた当時の思い出話から始まり近況報告、それから彼らの共通の趣味の科学の話題へと移っていった。
語り尽くすには時間は全く足りなかった。

次第にあたりが暗くなると母親が部屋を訪ねてきた。

「夜暗くなったけど、今日の宿とかは決まってるの?」
少年は全くその準備をしていないことを思い出した。1時間ほど話したら帰ろうと考えていたからだ。

「いえ、話すのに夢中になってたら宿を取るのを忘れてました」

「いいよ、うちに泊まっていきな。もとよりそのつもりだったしね」
少年はそんな迷惑はかけられないと断ろうとしたが、この気温で野宿するわけにもいかず言葉に甘えることにした。

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