おっさんキューピット
彼女は泣き止むと彼の腕の中で深呼吸をして話しかけてきた。

「ごめんね…。もう君の前では泣かないって、あの日のお別れの後に決めてたんだけど」

彼女は少し困ったように笑った。

「こっちこそ、寂しくさせてごめん」

「でも、私決心したよ。君の学校に高校から入る!」

「えっ?本当?」

予想外の言葉だったからか、嬉しかったからか。おそらくどちらもであろう。
深夜にとても出せないような声で彼は驚いた。

「うん。君に会いたいっていうのもあったけど、私にも夢があってね…。一昨年、おばあちゃんが癌で亡くなっちゃったんだ。すごく苦しそうで、お医者さんも頑張ってくれたんだけど、亡くなっちゃったの。だからね、お医者さんになってそういう人を救いたいなって。私が好きな化学を使って薬を開発するのもいいなって。だから理系に強い君の高校に入れたらなって…。どう思う?」

「君なら絶対できるよ。一人でも負けずに頑張ってきたんだし。ただ、僕にもその夢を手伝わせてほしいなって」

「僕も君が好きだ」
もうそれ以上の言葉はいらない。
二人は再度抱き合うと満天の星空をしばらく眺めていた。

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