おっさんキューピット
「色々とありがとうございました」

少年は家族に深々と頭を下げた。

「またいつでもおいでよ。この子も喜ぶからね」

「なんだ。結局何もしなかったのか?男を磨いてからまた来たまえ」
お父さんが小突かれるのを見ると、彼は家を後にした。

「で、どうだったよ、旅行の方は?」

「はい、すごく良かったです。色々なものをもらえたような気がしました」

「もう少し学校で頑張ってみようと思います。確かに、多くの人に嫉妬されるかもしれな
い。理解されないかもしれない。だけど、僕には大切な理解者がいます。彼女がいればどんなことでも乗り切れる。そんな気がするんです」

「そうか。少し見ない間に立派になっちゃって。いじめられ経験者からのアドバイスだ。いじめられてもひたすら無視しろ。あいつらはお前の嫌がる反応が見たいだけだ。
観測しなければ存在しない、素粒子みたいなもんだ」

「わかりました。本当に色々とありがとうございました」

少年は学校に、男はどこかに向かう。
少年はまたどこかで男と会う運命にあるのだと、直感的にそう感じた。

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